はじめに

Beethoven 

作品5 2曲のチェロソナタについて
 
チェロソナタ 第1番 Op 5-1

F. Schubert

アルペジョーネソナタ 1 2 3  5

 

 

 

 

 

 

 

2011年秋 リサイタルシリーズ

もくじ

その2

第二楽章 ロンド アレグロ ヴィヴァーチェ
8分の6拍子 F dur (ヘ長調)

 ロンドと表題にあるようにロンド形式で書かれている、チェロもピアノに負けず劣らず華やかな終楽章。 ロンド形式とは A-B-A1-C-A2ーD のようにひとつのテーマを挟んで次々に新しいテーマが出てくる古くからある歌の形式である。この形のCの部分が展開部になっているのがロンド ソナタ形式と呼ばれる。ハイドン、モーツァルトが主に開発しコンチェルトの終楽章などで多く使われた形式だが、ベートーヴェンは26歳のこの時すでに独自の個性的な方法でこの形式を使っているといえる。

  A部のテーマはこんな風にチェロがテーマを提示し、ピアノがそれを模倣している。この時期にしては斬新だと思われる事は一小節目から主調のF dur ではない和声で開始される事だろう。 (サウンド9) 第一番交響曲冒頭を属7和音から始めたのはこの数年後になる。


このテーマに続いて華やかな16分音符のパッセージも印象深い。AとBのモチーフをそれぞれの奏者が交互に掛け合いで出てくる。チェリストにはちょっとした難関である。サウンド10

B部は24小節目からちょっと風変わりなカノン風主題が出てくる。ここでベートーヴェンは頻繁にSf (スフォルツァンド)を書いている。ベートーヴェンの場合作曲した時期や曲の性質にもよるが、ここではそれぞれの入りを強調する程度な意味であると思う。シャープで強いSf は不似合いだろうと思う。 サウンド11

この後ピアノが右手だけの16分音符のパッセージでAs dur(変イ長調)になってAが再現されるが(60小節目)すぐに元のF durになって再現される。因みにここでAが再現された時チェロのテーマにはアクセントの変わりにSf をつけている。
  C部 又は展開部は76小節目から。転調を経て85小節目でb moll-Des dur(変ロ短調ー変ニ長調)の新たなロンドらしいテーマがチェロのピチカートに乗ってあらわれ、チェロで繰り返される。 サウンド12

この後117小節目からチェロの5度の上にあらわれる経過的パッセージは後の再現部でも使われるある意味重要なパッセージだ。129小節で並行5度でC durに戻る所も含めて印象的なパッセージである。第四番のソナタでもほとんど同じような並行5度を使っているのはおもしろい。ベートーヴェンはチェロの5度の響きが気に入っていたのだろうかと想像してみたりする。 サウンド13

 

141小節目から再現部、あるいはA2部。冒頭と同じ和声で書かれているが16分音符の装飾がピアノとチェロ交互に現れる。ピアノにテーマが現れる145小節目からはフォルテになりチェロが16分音符の装飾、ピアノが左右の手でテーマとその模倣をする綿密な書き方になっている。147小節からピアノパートの丸で囲った音をたどると16分音符の中にテーマがあることがわかる。 サウンド14

 この後Bも、もう一度提示され、205小節目からの長大なコーダに到る。ここではまず上に述べたチェロの5度を使ったパッセージがあらわれる。A部の主題がチェロで今までより1オクターブ高い高音域で再現され、さらにチェロはオクターブ重音(譜面上は重音では無いが、実質的には重音である。C線とG線でという注釈はベートーヴェン自信が書いたと思われる)の技巧的パッセージがある。

ここではA部のテーマから発展したモチーフを使って演奏技術的にも作曲技法的にも技巧的な展開が繰り広げられる。曲は次第にテンポを落としてアダージョまで至たり、第一テーマで全曲が締めくくられる。

 

 

 

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2011年6月30日

 

お断わり : 音源は合成音源ですのでご了承ください